さよなら、親不知(そして抜歯後の経過)

さよなら、親不知

去る3月26日、また親不知を抜いてきた。
もはやこのブログの記事の三割が親不知の話題になってしまっているが、それもこれまでである。今回抜歯した右下のブツで4本目、最後の一本だったのである。さらば親不知!

余分な歯がなくなったのは大変気分がいい。
……が、当日はそんな穏やかな気分でいられる状況ではなかった。

無意味な悶着

というのも、今回も左下を抜いたのと同じ大学病院で抜歯をしたのだが、前回の親不知抜歯に続いてまた一悶着あった。

その日私は10時の予約にあわせて9時半前に病院に到着し、受付を済ませてひたすら待つも全く呼ばれる気配がない。けれども「診察の内容によってはお待たせすることもございます」なんて張り紙が貼ってあるものだから「こういうこともあるか」とKindle本を読みながら時間を潰していた。

しかし二時間待ったところで、「本日の担当医」というディスプレイから私の主治医の名前が消えていることに気が付き、嫌な予感がして受付に詰め寄った。

「10時に予約していたしろがねですが、まだ待っていて大丈夫ですかね?」

と、ここではまだ控えめであるが、それを聞いた担当者がPCの画面を見ながら

「えっ? え~と……しろがね様は9時にご予約いただいていたんですが9時23分に受付されて……」

と始まったのでさすがに頭にきてしまった。
要するに、お前が遅刻してきたから放置してたんだよ、というわけである。それが事実だとしても受付時にひと声かけてしかるべきだと思うが、そもそも私の予約は10時である。

「10時と聞いていますが」

「ええと~一応入っている予定としては9時になってまして~」

電話予約なので私の聞き違えという可能性もあるのだが、「じゅー」と「く」はなかなか間違いにくいと思う。気は進まなかったが、相手がスケジュール帳のようなものを開いて別の日に予約を取り直させようという構えなのが見てたれたので、少し強く主張することにした。リスケは困る。月曜に休みを取るために職場に無理を聞いてもらっているので、気軽に「じゃあまた今度」とはいかないのだ。

「いや、こちらは10時と聞いていますよ!」

傍から見ていたらクレーマーとかモンスタークランケに見えたかも知れないが、それで担当者にも私が引かないという意志が伝わったのだろう。そこでまた「お待ち下さい」と15分ほど放置され、最終的には上位の看護師らしい方が出てきて謝罪してくれた。

しかし主治医には連絡がつかず(時間帯的にランチでも食べていたのだろう)、「一人別の先生が空いているので、担当変わってしまってよければこれから処置できますが……」と。

正直、直前で執刀医が変わるというのは結構恐ろしい。
医療ミスの元だと思うし、思い入れのない患者だからと雑な仕事をされるかも知れない。

それで迷ったのだが、結局やってもらうことにした。
やはりリスケは厳しいと判断した。決して、空いていたのが女医さんだったからではない……ない……ない……(エコー)。

予想以上にスムーズな施術、しかし術後は……?

その急遽代わってもらった女医さんだが、わりとテキパキと説明してくれて印象は悪くない。

そしていざ抜歯が始まると、前回のベテラン医師のときと比べても短時間で「はい、抜けました」と。

前回はかなりの難産であり口を開いているだけでもきつかったので、このスムーズさには拍子抜けした。歯が抜けると不安から一気に開放され、「手際の良い良医にあたったな」などと気分良くなったりした。

そして麻酔が効いてだらしなく開いた口元をマスクで隠しながら帰路についたのだが、興奮が解けてきた帰りのバスの中で、それが思い違いかもしれないという考えが過ぎって怖くなった。

というのも、急に思い出したのだ。
前回のおじいちゃん先生が抜歯の後に言っていたことを。
「そうとう大変だったけど、骨はあんまり削りたくないから歯の方を粉々にして抜きました」
術後5日後にはほぼ痛みも引いて、大きく腫れたり青あざになったり黄疸が出たり、という症状がほとんど出なかったのも、そのおかげだったのではないか。

要するに、今回すんなり抜けたのはガッツリ周辺の骨を削ってしまったからではないか?と不安になった。そして、残念なことにその想像は当たっていたのではないかと思う。

これを書いているのは術後5日であり、前回の施術のときと比べて明らかに痛みの引きが遅いし、青あざのように腫れている。

もちろん事前に「そういうこともありますよ」と説明は受けているのでおかしな事ではなく自然な経過なのだろう。前回の先生がことさらこちらの体に気を使って施術をしてくれたということだ。あるいは、その技術・経験があったということだろう。

加えて言うと、縫合も今回は明らかに一段落ちる仕上がりだったと思う。口の内壁が常に引っ張られて痛い。

まあ、医者によって技術力やら方法論が違うのは仕方のないことだが、やはり考えてしまう。「なんか遅刻してきたうるさいクレーマーがいるから適当に施術して帰らせるか」と、いい加減な治療をされてしまったのではないか、と……。そうだったらあまりにひどいし、患者にとっては一生に関わる手術だからただごとではない。

真実がどうなのかはわからないが、もしかしたらスケジュールを遅らせて前回と同じ意志に執刀をお願いしたほうが良かったのかも知れない(まあスケジュール的に厳しかったのだが)……と、微妙に後悔の残る人生最後の親知らず抜歯となってしまった。

【追記】二週間半経過した現在の様子。

さて、ここからは手術から二週間半経過しての追記だ。

二度目の施術がお粗末だった(一回目ほど行き届いていなかった)というのは確実だと思う。その後、家族に「どうしたのその色!?」と不審がられるほどの黄疸が首のあたりまで広がって、いまでも薄っすらと残っている。

また、抜歯時の歯茎の切開の仕方もあまり良くなかったようで、肉が盛り上がり傷がふさがってからも内壁と歯の間に変な隙間ができてしまい、米粒やら野菜の屑やらがやたら詰まってうがいをしてもなかなか取れない。

実はこれは抜歯前もそうだった。
前回の左の抜歯後はそうした食べかすの詰まりが一切ない綺麗な仕上がりになっていたので、今回もそれを期待していたのだが、そうはならなかった。歯茎の状態はまだ変わりそうなので、今後もう少し改善されていけばいいのだが。

しかしまあ、いずれにしても、親不知が全てなくなったという事それ自体は大変に気分が良い。

私には4本フルに親知らずが生えていた。
私の虫歯とか歯のトラブルはだいたいが奥歯に起こっていて、今考えるとその大部分が両側の親不知の圧迫により奥歯の歯並びがガタガタになっていたことに起因するのではないかと思う。
今更だが、もっと若いうちに抜いてしまえばよかったと悔やまれる。

しかし、怖かった。
歯茎を切開して、骨を削って歯を砕きながら取り出す、しかも悪くすれば麻痺が残る、なんて言われると、抜かなければと思いながらなかなか勇気が出なかった。問題を認識しながら10年近くが経過してしまった。

ネットで検索してこの記事にたどり着いた方は、もしかしたら歯茎に埋まった親不知を抜こうかどうか悩んでいるのではないだろうか? 今回経験者となった私からアドバイスするならば「思い切って抜け」「できれば信頼できる先生に抜いてもらえ」ということになる。

なんだかんだ言って怖がっていた施術もやってしまえばあっけない。
術後はもちろん痛むが、怪我をしたって痛いのだから我慢出来ないことはない。痛み止めだって良いのを出してもらえる。

回復の仕方も医師や状況によって異なるが、親不知による不調を抱えて心身ともに不安定になるくらいならば思い切って抜いてしまったほうが良い。

私は10年間怖がっていたが、もし1年で怖がるのをやめて抜いていたら「怖がらずに済む9年」と「トラブルの軽減された口内」を手に入れていたことになる。人生80年と考えると、その9年の違いは著しく巨大だ。

少なくとも私は抜いてよかったと思う。
さよなら、親不知。

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